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北山睦のTOP50観戦記2017 第5戦 霞ヶ浦

TOP50第5戦

ついに最終決戦の時がやってきた。

上位の選手、下位の選手ともに万感の思いで迎えたことだろう。

年間争いの選手は「年間を守れるのか?」「逆転できるのか?」と目の前の試合の事に集中し、年間下位に甘んじている選手も最後の足掻きを見せる。

「年間」「残留」の二文字が錯綜する最終戦。

舞台は最終戦には最もふさわしいと思われる霞ヶ浦水系。

小手先のテクニックよりも、「バスをいかに早く探せるか?」がテーマとなる広大なフィールドだ。

クリアレイクと違い、実際にバスを釣ってみないと「本当にそこにバスが居るかどうか」の判別がつかない。

プラクティスも含め、何とも掴みどころが無い。増して、バスにとっての適水温になるこの時期はバスの移動も早く、

なかなか追いつくのは難しい。ここは昨日釣れなかったスポットが今日爆発し、また、その逆も然りなのだ。

■暫定1位

そんな掴みどころの無いこの水系にフィットする選手が居る。

最終戦を暫定年間1位で迎えた青木大介選手だ。

彼は「その日の魚を探す」をモットーにしている。 もちろん、プリプラクティスや直前プラクティスから組み立てては行くのだろうが、

それが通用しないとなると、いとも簡単にそれらを捨てることも出来るのだ。

その青木選手は2位に27ポイント差を付けて最終戦を迎えた。

これは、何を意味しているのかと言うと、例えば予選30位で通過した場合、2位の今江選手は準優勝以上しなければならないという極めて厳しい差だ。

今年は出場選手の少なさから、5ポイント(参加点のみ)の選手が少なく、本来であれば混戦で迎えるはずの最終戦になるハズなのだが、

これだけの差がついてしまうという事は、今年の青木選手がいかに強かったのかを物語っている。

なお、1~4戦目において、全て予選通過(30位以上)という選手も青木選手と小林明人選手の2名のみ。これも極めて珍しい現象である。

■初日はキャンセル

会場となる潮来マリーナは北東向きのスロープだ。

従って、北東の風には弱い。

10月20日のDAY1は、秋雨前線と台風21号の影響でスロープに向かって10m以上の風が吹き付け、ランチング不可という事で

早々にキャンセルが決まってしまった。

なお、このキャンセルによりルール変更が行われ、DAY2とDAY3は予選決勝方式を取らずに二日間全員参加の総重量制となった。

こういう事はTOP50ではたまにあることで選手も慣れている。全選手イーブンなのには変わらず、選手も特段これと言った困惑も無い。

こういう時はほとんどの選手は休養に充てる。

公式プラクティスも含めると、この初日というのは実質3日目。身体の疲れも溜まってくる。

準備はすでに済んでるはずなので、こんな時は徹底して休養を取る。疲れを取るのもプロの仕事なのだ。

仮にDAY3まであれば、2日間開催される上に、純粋な総重量制となったことで、ミスをしても取り返す時間的余裕はある。

予選制が無くなったことにより、少しは気分も楽なはずだ。

ところが…

■DAY2は無事開催

DAY2。品川から北浦の潮来マリーナまで急いで向かった。

というのも、このDAY2も台風か前線の影響で”そこそこ”荒れていたからだ。「実際に開催されているのか?」と疑問に思ったものの、

流れて来るTwitterの速報を見ている分には、何とかスタート出来たようだった。

ディレイドスタート(スタート時間を遅くして様子を見る)というのも無く、1艇ごとにランチングしてそのままスタートしていくという方式を取ったようだ。

おかげで、50番目のスタートまでは少し時間を食ったようだが、Bカテゴリ(ゼッケン51番~の選手。30分遅れのスタート)も含めて

無事にスタートしたらしい。

しかしながら、道中では「ひょっとして1DAYで終わってしまうのではないか?」という疑念に駆られていた。

というのも、予報では翌日の本来のDAY3は台風の影響をもう少し本格的に受けて荒れるというものだったからだ。

もしそうなると、どうなるのか??

一言で言えば、「単なる1DAYの試合になってしまう」ということだが、これが年間争いにとっては非常に重要な条件変更となってしまうのだ。

何故か?

暫定1位の青木選手と2位の今江選手では27ポイントの差が離れているのだが、複数DAYの試合となればこれは非常に大きな差となる。

しかし、1DAYとなると、このDAY2の成績のみで全てが覆ってしまうというこになる。

分かりやすく言えば、仮に青木選手がノーフィッシュで帰って来てしまった場合、今江選手が28位以上であれば年間を奪うということになる。

もっと言えば、先ほどの仮の条件の場合、年間暫定順位で55ポイント差までの選手全員に”マクリ”のチャンスが与えられることになる。

下位の選手にとってみれば、「チャンス」となり、上位の選手にとっては「ピンチ」となる。まるでクイズ番組の最終問題が「ポイント3倍」みたいなもの。

道中の車中でTitterのオブザーバーのツィートを見ている限り、それほど釣れている様子はない。どちらかと言えば、

霞ヶ浦水系にしてみれば”シブい”状況に見えた。

まさか「あの青木大介がノーフィッシュで帰ってくる?」なんてことが現実にあるのだろうか???

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無いとは信じたいものの、11:00に潮来マリーナに到着した私は滅多にないカメラマンのツィートを見て「これは…」と思った。

「青木選手、苦戦しています。いまだノーフィッシュ。」画面にはそう表示されていた…

確かに湖面は北東の風で荒れてはいたが、「果たしてあの青木選手がノーフィッシュで帰ってくるようなことがあるのだろうか?」と

6年間同じ試合に出ていた頃の彼を思い出しながらそんな心配をしていた。「いや、必ず釣って来るだろう」

じりじりした時間が続く。

12:30過ぎ、心配は杞憂に終わる。

「青木選手、釣った!」

画面に表示された。短い文章ではあるが、最後の”!”はツィートしたカメラマンさんの気持ちをとてもよく表しているように感じる。

自分が同船していたとしても同じようなツィートになっただろう。

サイズは25cm以上であればどうでもいい。この試合に限っては兎に角、ウェイイン出来るバスを1本釣った事にとても大きな意義があるのだ。

試合というのは、5本釣ってド派手なキメ方はもちろんカッコイイのだが、実際にはこういう苦しい時に1本搾り出せるかという中で釣ってくるのも

プレーヤー側からしてみればシビレるものだ。

この後、更に1本追加のツィートが入り、Twitterによる中継は終了した。

暫くすると帰着が始まった。

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河辺選手が帰着。カラフルなラッピングにシンプルなロゴで、遠くからでも一目で判る。

魚は持ってる顔に見えた。

続いて小森プロの帰着。

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この顔は”釣れている”という顔ではないものの、、、

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搾り出した安堵感から来る笑顔。翌日には繋がった(この時点は、DAY3が開催されればの話)

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貴重なバスのウェイイン準備をする河辺選手とデッキ上のYABAI!たち。

「いや~、まいたよ~」という声のトーンから荒天による釣りの難しさが読み取れた。

タックルからもこの日の苦労が伝わってくる。様々な巻き物ルアーが5~6セットあった。

残念ながら、釣れたクランクベイトはロストしてしまったそうだが、巻き倒して午前中にクランクに来た貴重な1バイトをモノにしてのウェイイン。

危ない綱渡りをプロトのYBAI!の巻き物ロッドが助けてくれたようだ。

1本968gで32位ながらも多くの年間上位陣を含めた15人がノーフィッシュの中で、魚を持って帰るというのは地力がモノを言った結果。

やはり、七色戦から続く好調が続いている空気を感じた。

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フラストレーションが溜まってそうな澳原潤プロ。ホームだからなおさらかもしれない。

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そうとは言え、この試合ではFantasita4選手の中では数は一番と言える3本1694gをウェイイン。

16位ながらも、DAY3が開催されればまだまだ上位が狙えるところに付けた。

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小森嗣彦選手は1本1208gをウェイイン。この日の1本の平均重量が859gだった事を考えるとクォリティフィッシュだ。

この後、小森選手のDAY3の準備を見に行ったが、デッキの上はやはり巻き物が占めていた。

この日は3バイトあったようだ。ブレイク上からクランキングやスピナーベイトで巻き、ブレイクの沖まで引っ張ってくるという釣り方で

バイトが無い時間が続き、スピナーベイトにあったたった1回のバイトからヒントを得て、ボトムに当ててから少し浮かすという釣り方にシフトして、

3バイト1フィッシュとなった。これは”経験とワザ”がモノ言った1本だろう。

ロッドはFantasista STUDIOUSのプロト、65MLというクランキング専用ロッドだ。来年楽しみなロッドの一つ!

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そして青木大介選手。

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お昼の「釣った!」ツィートの後のツィートでもう1本追加していることは分かってはいたが、結果、その2本だったようだ。

それでも、このウェイインバッグの重みを味わっているようにも見えた。

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2本2304gで単日10位。12時までノーフィッシュだった事を考えると、よくここまで持ってきたものだ。

だが、それが青木大介だ。

彼は常に「釣って来て当たり前」という誰もが一目置く立場の選手だ。

だが、そんな彼でも相手が自然だけに時には「難しい!」と感じるシチュエーションがある。

特に今回のようにプラクティスが1ミリも役にも立たないような大幅な天候の変化はきっと誰もがそう感じたはずだ。

そんなピンチに陥った彼がしたこととは?

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「ワケわかんねぇから、とにかくその場その場に合った物をひたすら入れていった」

この彼の言葉に集約されていた。まさに本人の著書「適材適所」だ。

例えどれだけ荒れていようが、ヒューマンプレッシャーがあろうが、「腹が減っていれば餌を食う」のである。

極めて「当たり前」の摂理なのだが、そんなバスに対して「適切な場所に適切なルアーやリグを入れていく」という「当たり前」が出来たアングラーのみが

バスに触れることが出来る。

その「当たり前」を実現するには適切な位置に適切なルアー(リグ)を送り届ける必要があるのだが、あくまでもそれを手助けしているのがFantasistaであり、

今回の場合はDeezがその役目をしっかり果たしたということだ。

今回の試合では、Fantasista Deez FDNC-610MH MGSでD-Spikerというスピナーベイトを”ここぞ”と感じる場所にガンガン投入していったとのことだ。

これに唯一来たバイトを無事に取り込んだ。

青木大介ほどの選手といえども、この1本には”手が震えた!”そうだ。これだからトーナメントはやめられない。

青木選手の著書「適材適所」を読んでいても、「当たり前の事」が書いてある。

様々な細かいテクニック(昔は”○○釣法とかいろいろあった)、所謂”技”というのはそれぞれの選手が持ってはいるが、結局のところそれよりも

もっとも大切なのは「基本」以外なにものでもないということだ。

私が6年間TOP50に在籍して感じたことはTOP50の選手というのは「小手先のテク」は元より、「恐ろしいほど基本的なテクニックが上手い」ということだ。

結果、今回の青木選手の様に荒れたときこそ「当たり前のこと」(基本)をしてこそバスを搾り出すことが可能になる。

■DAY3はやはりキャンセル

朝6:00前に現地に着いた私は、車を出た瞬間に「これはダメかもしれない」と感じた。

本部に向かう前に既に協議が行われて、3日目は早々にキャンセルが決定した。

6:30から表彰式が行われるとアナウンスされた。

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今年の持ち主を待つWorld Championの特大カップ。

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いよいよ始まる表彰式。雨にもかかわらず、今年一番のギャラリーが集まった。

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青木選手。どういう訳か、彼は私がカメラを向けると何かしらのポーズを付けてくれる(笑)

そう言えば、先ほどのウェイインカードをくわえている写真もそうだが、いちいち”画になる”選手だ。

表彰式が始まった。

TOP50史上初の1日で終わった試合に各選手いろいろな思いがあるだろう。

「もし、自分が出場していたらどんな気分だろう?」と思い、眺めていた。

初日ノーフィッシュだった選手はきっともう1日やりたかったに違いない。その中にはもちろん年間争いをしていた選手も多数含まれている。

逆に、一気に下位から突き上げてホッとした選手も居たことだろう。

1DAYの試合にはなってしまったものの、これほどいろんな選手の思惑が入り混じった表彰式ももちろん史上初なハズだ。

優勝は関和選手!

ホームグランドで優勝するのは簡単そうで実は簡単ではない。TOP50では特にホームの選手が優勝するケースが非常に稀なだけに盛り上がった。

また、3位の竹内選手も霞水系をホームとする選手。

このように、地元の選手が表彰台を占める中、市村直之選手はこういうタフな試合に強いところを見せつけていた。

Fantasista4選手の成績ももちろんDAY2の通りとなった。

そして、最終戦は年間表彰もある。もちろん、”あの”カップの行先は決まっていた。

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バスマガジンでは見慣れた光景ながら、この画像が一番好きだ。

一年の苦労が全て報われる。まして、最終戦はおそらく今までの1年分以上のプレッシャーが掛かったところを潜(くぐ)り抜けての獲得だ。

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この組み合わせで長話をしてるシーンは私の在籍中には見たことが無い。

内容は割愛するが、普段あまり話すことが無くても、結局はお互いが「強いヤツ」としてリスペクトしているのがこの世界だ。

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こう来たか…

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ケーキ入刀!

何ともアメリカンな甘い匂いのするケーキだが、レギュラーシーズンを終えた後の疲れを少しは癒す甘さだったに違いない。

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今年はいずれにしても”青木大介の年”だった。

出だしこそ、スロースタートとなったものの、第2戦の優勝からチャージを掛け、最終的には2位に37ポイント差のぶっちぎり。

今年のTOP50は出場選手が少なく、毎試合51位以下の5ポイントの選手がほぼ居ないため、実はポイント差が非常に付きにくい中でのこのポイント差。

それだけに価値あるWorld Championだ!

そして、Fantasistaメンバーの中に2人目のV3チャンピオンが誕生した

小森嗣彦選手は年間6位。

残念ながら、最終戦では小林明人選手に捲られて、CLIMAX ELITE5(年間上位5名のみが出られる)の出場権獲得は逃してしまったが、

年間通して、青木選手と2人だけ全戦予選通過して年間5位になった小林選手を讃えていた。

来年もきっと、青木選手との”デッドヒート”を演じてくれるに違いない。

河辺裕和選手は年間26位で終了。

今年は初戦から流れの見える1年だったように見えた。

初戦からの粘りが第3戦の七色戦で噛み合い出し、最終戦でも貴重な1本を釣って来た。

ベテランの経験値というのはやはり高い。

TOP50はこういう”経験値”と若手のサイトなどの”ワザ”がぶつかり合うからこそ面白い。私もTOP50在籍中にはこういうベテランの

技術に刺激を受けた。「そう来るのか…」と。

来年はさらに”オヤジの力”を見せつけてくれるだろう。

澳原選手は年間34位となった。

この数字には本人が一番感じているものが大きいだろう。

TOP50シリーズは年間30位以下が下位カテゴリーのマスターズとの入れ替え対象となる非常に厳しい世界だ。

来期、いずれのカテゴリーの試合に出たとしても、今年の反省を活かしてきっと活躍してくれるはずだ。

REGISTAの逆襲に期待です!

こうして、全52名の万感の思いが交錯したTOP50最終戦が終了した。

選手の皆さんは来期に向けて忙しい時期がやって来る。

TOP50は「1年間戦える体制」を整えてこそ出場が出来る。これから3カ月は全ての選手がその体制作りに注力しなければならない。

また、シーズン終了後というのは、いろいろな製品テストに勤しむ時期でもある。

そう、TOP50選手には”オフ”など無いのだ!

私もこういったTOP50のリアルを1年通して書かせてもらいましたが、初の試みということもありお伝えしきれなかったところもあると思います。

今期の反省を生かしながら、来期は読みにくくならない程度に”もう少し深く”書いてみたいと思いますので、お楽しみにしてください!

北山 睦

2017.11.30